『ネズミとモグラの受難について』

うちの庭か近辺のどこかに棲むネズミとモグラたちの被害が続出している。今日も昼頃起きて庭を見ると、白日の下、大きなモグラの惨殺体が芝生に仰向けに転がっていた。ああ、親モグラもやられたかと私はため息をついた。犯人は「はるかちゃん」である。

昨夜、といっても午前二時頃のことだが、例によって庭からの母ネコはるかちゃんの異様な泣き声に、仔猫の「G」が私の布団からとび出した。外へ出せといってきかない。それでしぶしぶガラス戸を開けて出してやった。案の定Gは瀕死の「獲物」を受け取り、冷え込む丑三つ時の庭で喜々としてヒメネズミとたわむれるのだった。哀れ獲物はうす茶色をした体長わずか5cmほどの子ネズミである。その一時間後、Gは今度は子モグラで遊び興じていた。体毛は黒く、鳥の嘴のような鼻先だか口だかは茶色く、愛嬌のある姿かたちをしていた。こちらも助けようにも時すでに遅しという観であった。その後、結局親モグラも犠牲になってしまったのだ。これで何匹目だろうか。

三年ほど前から、まだら模様の雌ネコが棲みついている。一面に雪が降り積もった冬のある日、脅えて動けなくなり軒下で泣き続けた。箱に古いセーターを敷いてやると、そこで寝起きするようになった。家に入れて飼ってやりたかったが無理だった。私は十五歳になる、とても気の強い三毛ネコを飼っている。彼女がいじめ、どうしても受け容れない。それなら庭でも軒下でも結構と、棲みついてしまった。そのネコに「はるか」と名付けて半飼いすることになったのだ。

そのはるかちゃんも成長し、年頃になった。何度か妊娠したようで、腹が大きくなったことがある。しかし育てる能力がなかったのかいつのまにか腹をペタンとさせて現れる。子育てに奔走しているふうでもなく、楽しそうに遊んでは、すぐまた雄ネコに口説かれていた。その結果、今年の七月、みごとに四匹の子供を産み、うちの庭で子育てを始めた。もちろん私は孫の世話でもするように、はるかちゃんの子育てを手伝った。三匹は貰われていったが、一匹だけを置いておくことにした。子供を溺愛していたはるかちゃんは、一匹減るごとに嘆き悲しみ探し続けた。また、妊娠すると大ごとだと避妊手術を受けさせたが、母性はは止むことがない。一匹残った白黒のオス、G君をさらに溺愛するようになった。兄弟で一番気弱に見えたGを、まるで目の中に入れても痛くないといった可愛がりようである。

言うまでもなく餌は充分に与えている。キャットフードはもちろんのこと、閉店前のスーパーで、小アジやイワシも買ってくる。母子ともすこぶる健康体で実によく食べる。それにも拘わらず、血が騒ぎ野生にめざめるのか、はるか母さんは突如として狩りに出かけ獲物を仕留める。ヒメネズミもモグラも懸命に生き、子育てをしているのだ。巣から突然引きずり出され、単なるおもちゃのために非業の死を遂げさせられる彼らにいたく同情する。

どうにかして狩りをやめさせる名案はないもののか。とりあえずはるかちゃんの首に鈴を付けようと思っている。
2002.12
前のひとり言 次のひとり言

ひとり言 INDEXへ