「“平成道行考”舞台裏」

このHP「平成道行考」は2002年11月末に開設し、9ヶ月目に入った。

私ごとで恐縮だが、開設当時まだ私は鬱から脱しきれない状態にあった。「怨憎詩集」等でお判りのように、昨夏、天地が逆さまになるような出来ごとが発覚したからだ。その前年、2001年の春に最後の生徒たちを送り出して以後、私は念願の読み書き生活を堪能していた。初めて長編小説に挑戦するなど、毎日機嫌良く悠々自適の生活を送っていた。そこへ降ってわいたような災難である。精神が急激に衰弱し、鬱へと移行してしまった。悪夢のような数ヶ月を経て気がつけば秋が深まっていた。鬱が慢性化することに不安を抱き、何かしなければ潰れてしまうと焦りを感じた。その状態を打開するために思いついたこと、それがHPを立ち上げることであった。

以前より手もとにたまった恋愛詩三十数編をいつかは公表したいと思っていた。それは同時に、セクシュアリティに囚われない私の今の生き方をアピールすることでもあった。こうして「恋愛詩」「ひとり言」各数編、短歌数首のみのつましいスタートを切ったのだ。「恋愛詩」は季節にあわせ、毎週1〜2編を、「ひとり言」は必ず1編を毎週金曜日にUPすることを義務づけ、短歌は不定期で加えていくことにした。ほかのHPを見ていて、運営しているのはどんな人だろうとよく思うので、写真も出すことにした。

セクシュアルマイノリティの大きな団体のいくつかに相互リンクを依頼し、いろいろな検索エンジンに登録した。わずかずつでもカウンターの数が上がりはじめると、どこかで誰かが読んでくれているのだと嬉しかった。数字が伸びる日は喜び、伸びない日はガッカリした。カウンターなどつけているから気になるので、外してしまえば囚われずにいられるのかなとも考えたが、反響を知るめやすとしてつけておくことにした。

五月の初めに大幅なリニューアルをした。TOPPAGEを変え、「怨憎詩集」と「さみだれ詩集」を加えた。恋愛詩集は手持ちの詩を出し尽くしたら完結させようと思っていたが、しのびなく新たに作って足していった。数編の新しいものを加え、第一集は三十六編で完結させた。しかし、それで恋愛詩が出てこなくなるのを残念がる人もいてくださるのではないかと思い、恋愛詩集「平成道行考」は第二集として続行させることにした。毎週ひとつ熱烈な恋愛詩が書けるかどうか、これは綱渡りをするような決断であった。

話題騒然の「怨憎詩集」は、昨年十月頃から短期間に集中的に書いたものである。やっと文字を書く気力を取り戻した時、恨み、憎しみ、怒りが噴水のように吹き上げた。あふれ出る言葉を書きとめ、清書をして作品に仕上げた。女であること、妻という立場に居ることの理不尽さを痛感し、これより大きな裏切りはないという絶望感に晒されながら、血が滲む思いで綴った。女性たちから涙、共感をいただき、公表して良かったと思っている。

「さみだれ詩集」には人生その他を詠ったものを入れている。重いものから遊び心で作った軽いものまで種々雑多という感じである。「ひとり言」も同じである。ネコだ、アジだと喋ってみたり、真面目にブンガクやマイノリティのことを語ったりもしている。これも気の向くままのひとり言である。

七月初めに病気サイトを加え、「メッセージボード」なるものを中旬に開設した。はじめに数名のご好意で書き込みがあったものの、あとはお情けの生徒や知人がポツリと書き込んでくれるのみであった。仕方なくセミだのウグイスだのと自分で喋っていたが、何の反応もないので虚しくなり、「閉じようかと思う」と呟いた。そのとたん二名の嬉しい「存続希望」のお声が届き救われた。続行を決めた。ボードの効果か一週間に100〜130くらいの伸びだったカウンターが、300〜400になり驚いている。以後ボードやメールで皆さんのナマの声を聞き、たしかな手ごたえを感じている。(皆さんの方も、作者がこんな奴だったのかと少しわかったことでしょう)

さて、今後のHP「平成道行考」のゆくえやいかに?舞台裏ではあれこれとピンチもあった。UPの日が迫っているのに詩が浮かばなくて焦ったこと、目の具合が悪くて本が読めず、わずか20ページの小松氏の文を要約して「遁世」で一ヶ月間逃げたこと……。冷や汗である。今後どの方向に進むかは未定だが、最初に決めた「週一回、金曜日深夜UP」を1年間は死守したいと思っている。

ただ、文はその気になればいくらでも書けるのだが、詩だけは強い感情の噴出がなければ一語も出てこない。なるべく今の自分が詠んだもの、しかも納得できるものしか出したくない。書けないときはたまに休ませてもらおうか。無理をせずにと言ってくださる皆さんのご厚意に甘えさせてもらうとしよう。

ともあれ、自分が立ち上がるために立ち上げたHP、「平成道行考」はまだ続く。ではそろりと参ろうか。
2003年8月
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