「右近庵猫事情」

久しぶりにネコのことでも語ろうか。右近庵に住んでやがて6年になるが、その間に10匹ほどもネコは去来しただろうか。いま関わっているネコは5匹である。彼らを紹介するとしよう。

★飼いネコ(2匹、ダッコ、じいじい)
・ダッコ(ミケもどき16歳・メス)、掌に載るほどの頃、仕事場兼住居であった堺市のマンション横の竹藪で拾う。生粋のノラでその凶暴さはすぐに現れる。家人はみな傷だらけになり、深手を負ったときの一生消えない傷を全員が身体のどこかに残す。家人以外に決してなつかない。気にいらないと龍が火を噴くように烈火のごとく怒り、引っ掻き噛みつく。そのくせ玄関でご用聞きの人の声がするだけで慌てて弁慶の八艘跳びのごとく箪笥を渡り、天袋を自分で開けてお隠れになる。ムツゴロウさんこと畑正憲氏曰く、ネコも野性が強ければ強いほど、一旦なつけば人間を頼り慕うという。自己中心的、短気、凶暴、気まぐれ、喧嘩っ早く協調性ゼロ。人間だったら大変なところダッコはネコで良かったのだ。それでも加齢とともにいくぶん性格は穏やかになった。甘え上手もわがままも天下一品、振り回された16年だった。

・じいじい(白黒、1歳2ヶ月、オス)、すでにおなじみ人気キャラクターはるかちゃんの息子。昨年の夏に生まれ、今ではスラリとした姿態の美しい成ネコになった。出産後、避妊手術を施したはるか母さんのために、1匹だけそばに置いてやろうと思って残した。じいじいに決めた理由は、いちばんたよりなくのんびりやだったからだ。しっかりした兄貴や姉妹が貰われていったあと、母親の愛情をひとり占めし、いっそう甘えん坊になった。そのじいじいも発情期がきてソワソワし、一日半ほど帰ってこなかったことがあり心配した。食が細く子猫の頃から妙な咳もしてひ弱なので、悩んだ末に男として生きさせることを断念し去勢をした。直後はすっかり虚ろな表情になり去勢したことを後悔した。しかし右近庵には自然が豊か、虫、ヘビ、野ネズミなど捕まえる狩りの愉しみで元気になった。気弱で臆病、甘えん坊じいじいを、私ははるかちゃんと競って溺愛している。

★半飼い半野良ネコ(1匹、はるかちゃん)
・はるかちゃん(さび色まだら、3〜4歳、メス)、生命力旺盛、らんらんらんと明るく楽しく生きるポジティブネコはるかちゃんはおなじみだ。去年の冬から「飼いネコ」に昇格させたのだが、今はまた、「半飼いネコ」になってしまった。それにはこんなワケがある。去年の冬、じいじいの父親(らしい)クロに情けをかけ、室内に入ることを許した。親子は和気あいあいと一階の居間やソファを占領し、ホットカーペットの上で3匹は川の字になって寝たりした。一家にとってあの頃は幸せの絶頂であった。ところがのっぴきならない事情があって、クロを追放しなければならなくなった。すると長老ダッコは、また「はるかちゃんいじめ」を再開した。室内に居ることを断固として許さないのだ。それで仕方なく、ダッコの寝ているときのわずかの時間だけ入れてやる。もともと屋外派はるかちゃんはそのことをすぐ受け容れ、以前のように軒下か物置の上で寝ている。じいじいもときどきそれにつき合っている。

★野良ネコ(2匹、トラ子、トラ吉)
・トラ子(茶色全トラ、年齢不明、メス)、半年ほど前から垣根に顔をのぞかせるようになった。はじめははるかちゃん目当てのオスかと思っていたが、腹が大きくなりメスだとわかった。野良のメスが妊娠をくり返し、苦労して子育てをし寿命を縮めるのは可哀そうなことだ。人慣れしていれば捕まえて避妊手術を施せるが、トラ子も純野良で「ハァーッ」と威嚇しながら餌をねだり、私の手を素早く引っ掻こうとする。野良独特の俊敏さもかなりのもので、とうてい捕まえられそうにない。ダッコにかしずく身でも、自分の家のつもりのはるかちゃんとメス同士の熾烈な闘いをくり返している。トラ子は一度だけかわいい仔猫をつれてきたことがある。やっぱり全茶トラのその仔猫は、あれからどうしたのか気になっている。

・トラ吉(茶色全トラ、年齢不明、オス)、トラ子に遅れること2〜3ヶ月、同じく庭に顔を出すようになったのがオスのトラ吉である。トラ子と全く同じ色と柄なので、違いに気づかなかったが正面から見るとオスの顔、まるでトラのような顔つきでハンサムである。痩せており、背中や尻尾の毛がハゲている。臆病ながら、やたら大きな声でエサを催促する。警戒心が強いがエサが欲しいため、しだいに私のそばまで来るようになり、頭を撫でられるまでになった。今ではよく太って元気そのもの、ハゲた部分も毛が生えてきている。しかし困ったことに右近庵を独占したくなったのか、じいじいやはるかちゃんをいじめ、日なたぼっこ中のダッコにまでも飛びかかるようになった。一日に何度も来てやかましくて困る。このエサ場を乗っ取るつもりでいるのだ。目下、トラ吉のことが悩みの種である。

クロやトラ吉、つまりオス猫の可愛さと、どうしようもなさを次回に語るつもりである。ああ、またトラ吉がエサの催促に来た……。

いつも不機嫌なダッコ 食欲旺盛なトラ吉 なかよしはるかちゃん親子

2003年9月

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