「“セクシュアル・マイノリティ”について」

マイノリティという言葉は定着しつつある。minor(形:少数の)の名詞形でminority、少数派のことである。この語の前にsexual(形:性的な)をつけるとsexual minority、「性的少数派」のことである。

私も含めそう呼ばれる人びとは何ゆえ「少数派」なのか。それはこれまでの生物学的判断にのみ基づいた外部からの区分けを拒絶し、覆した人たちの数が全人口に対して少ないからである。しかし「少数派」であることは恥じることではない。我々はみな、なにがしかの「少数派」の部分を有して生きている。私の例で云うと、健康な人びとを「多数派」とすれば、ビョーキ持ちの私は「少数派」であろう。昼夜逆転のような生活をしている私も、異様にネコ好きなことも「少数派」である。もろもろの「少数派」同様、「多数派」は「性的少数派」をうとんじたり非難してはならない。また、「少数派」も自分たちの殻に閉じこもってはならない。認めあって共存することが大切なのだ。

一般の方々は「セクシュアル・マイノリティ」という言葉から何を連想されるだろうか。オカマ、オナベ、ホモ、レズ、ニューハーフ、Mr.レディ、Miss.ダンディなどの言葉が同時に浮かんだ皆さんは、テレビを中心とした質の悪い情報に毒されていると思われる。なぜならば、これらの呼称は正式なものでなく、面白おかしく茶化して呼ぶ蔑称に近いものばかりだからだ。マスコミの造語で呼ばれ、それを不快に思わず華やかに登場する人びともたしかに居る。だが、かれらがセクシュアル・マイノリティを代表しているわけではないのだ。

「FTM日本」主宰の虎井まさ衛氏曰く、「性同一性障害に悩む人びとは、出生時に指定された性別とは対極の性を自分の本来の性だと考える。したがってそのことを売りにすることは少なく、社会に溶け込み、目立たず地味な生活を望む人が多い」。なるほどと頷ける。

セクシュアル・マイノリティを理解するのには、「性自認」と「性的指向」(嗜好ではない)が基準となる。再度これらの語の意味を説明しておく。

「性自認」……身体の現状に関係なく、頭、心が望む性であることを自己認識すること。

「性的指向」……その性自認をもつ自分が向く愛情または性交渉を望む方向、傾向。

身体的なことが大きな問題となるセクシュアル・マイノリティには、GID(性同一性障害)や、IS(インターセックス、半陰陽)の人たちが居る。最近よく知られてきたGIDは、身体と心(頭、脳)の性が不一致であることにより違和感に苦しむこと、あるいはその人びとである。ISは男性とも女性とも判断できない両性の特徴を内性器や外性器に併せもつこと、あるいはその人びとである。ともに出生時に性器の形態から決定された性別に、成長とともに不都合を感じ、苦痛を強いられるのである。

身体的事情とは別に、愛情がどの方向を向くかということでも「セクシュアル・マイノリティ」は「少数派」とされる。「性的指向」において異性愛(ヘテロセクシュアル)を「多数派」とするならば、同性愛は「少数派」として偏見と非難に晒され続けている。

同性愛には女性同士のレズビアンと男性同士のホモセクシュアル(ゲイ)がある。ともに同じ性であることを認めあい愛しあうのである。同性愛ほど偏見を持たれ、誤認識されているものはない。皆が皆、片方が別の性を演じる役割を担っているわけではないし、風貌や服装を変えるわけでもない。同じ性であることを認めあって愛しているという基盤に、さまざまな形で伴侶として共に生きているのである。

GIDの「トランスジェンダー」は心の性に自分を定めるが、その「性的指向」の方向は人によって異なる。心の性(その人の“性”)とは別の性に向けば異性愛、同じ性に向けば同性愛である。また、「性自認」が時に変動し、両方の性を行き来する人もいる。それにつれて「性的指向」も変わる。それがバイセクシュアル(bisexual,biは“2”を表す)と呼ばれる人たちである。

このように「セクシュアル・マイノリティ」の人びとは多種多様である。出生時に指定された性別に違和感をもたず恋愛し、婚姻関係を結んで人生を歩む男女の数に比べれば「少数派」であることは否めない。しかし性自認やジェンダー(社会的な性)、ひいてはヒトの在り方が多様化している現代で、従来の形こそが唯一無二のものであるという風潮は、いかがなものであろうか。既成の仕切りを取り払った愛が不謹慎だ、気味が悪い、神の摂理に背くなどと非難されるいわれはない。ヒトとヒトとの魂が惹き合って育む愛は、どんなかたちであれ尊いにちがいない。堂々と胸を張って生きてよいはずなのだ。

「少数派」が少数派でなく「多数派」の中に自然に溶け込み、同じように生きられる社会を構築するには共に学び理解を深めあうことしかない。
2003年8月

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