「“買物依存症”気分」

このところ私は買物ばかりしている。居ながらにして商品の注文ができ、届けられるカタログショッピングである。

病気を持ってから外出が減り、カタログでものを買うことがふえた。今までどんなものを買ったかと云えば、大きなものでは本棚である。それは奥行きが15cm弱、幅は選べて高さも天井まで自在に伸びる。これが気に入り、三つも買ってしまった。おかげで床に溢れていた本がすべて収まった。そのほか衣裳ケース、引出し式の整理ボックスなど収納に関するものをよく買った。小さなものは腕時計や靴、ブーツ、下着にまで及ぶ。

ご存知かどうか、私はものを買わない方の人間である。身につける小物雑貨はともかく、それ以外のものは必要に迫られなければ買わない主義である。使えるものは使えなくなるまで使いきる主義なのだ。ものによって家が狭くなるのが嫌なのだ。空間は何よりの贅沢だと思っているからだ。したがって買うに際し、かなり吟味をして買っているつもりである。ただ、私は人が出かけてその辺で買うようなものまでカタログで買うので、夕方以降は配達の車の出入がやたら多く、近所の人は私のことを、よほど浪費家だと思っているかもしれない。

実際、ここひと月の買い方は尋常ではない。これはどうしたことか。なぜ私は激しくものを買っているのか。理由はわかっている。まず、独りになって以前よりも時間がたっぷりある。あり余っている。その上まだ読み書きに没頭できるほど元気ではないので、ボンヤリと過していることが多い。気分が沈みそうになってきたら、それを追い払おうとしてカタログに手を伸ばす。あちこちのデパートや通販会社からの山積みになっているカタログをパラパラとめくってみるのだ。見ているとなんとなく楽しくなる。

しかし、今までであれば見ているだけで買うまではいかないもの、なくてもいいものまでを欲しがっているのに気づく。まるで買物依存症のようだ。この一ヶ月で私が買ったものは以下である。

○フリースタイル式リビングこたつセット
このこたつは2種類の“継ぎ脚”を使って、テーブルの高さを4段階に調節できる。椅子2脚と掛ふとんもついているが、書きものをするため椅子は快適なものがよい。そこで背もたれが高い“デラックスタイプ”の椅子も1脚追加した。居間に置いて年じゅう使える。

○ニットふとんカバー 2枚(オレンジ、グリーン)
ニット地のふとんカバーは使ったことがなかったが気持がいい。ふとんをスッポリ覆う袋式のものが私は好きだ。

○フラノ襟カバー(6枚セット)
ふとんというのは端が汚れやすいので、これを付ければ気がねなく、ふとんにスリスリできる。フラノは肌ざわりもよくて気持ちいい。

○フリースはんてん 2枚組(黒、赤)
北の地方ほどではないが、右近庵の冷え込みは大阪では屈指である。フリースは猫の毛だらけになるが、軽くて暖い。これも書きもの読みものの時に重宝。

○カーディガン 2枚(茶)
娘たちが偶然にも同じデザインのものを欲しがり、それぞれに買い与える。

○ハンチング(茶)
男物のSを買ったが気に入らない。後頭部が深すぎない方が好きなので返品の予定。

○綿タートル 3枚(黒・グレー・グリーン)
綿製品ならココと決めている。男物のSサイズがあるのでコートなどもよく買う。買ったタートルも男物のSサイズ。

しかし、ブランドものを買いあさるわけではなく、寒い冬に対して必要なものばかりではないかと思う。服や身につける小物は、TV(トランスヴェスタイト=異性装主義者)であるための必要経費でもあるから仕方がない。 あ、そうだ。それに現代仏壇も購入した。


尚、今後の注文予定商品は以下である。

ダイソンの掃除機、リビングのカーペットならびにリビング用一級遮光カーテン、低反発クッションの座布団、電気卓上なべ、フィットする暖い黒の下着、やわらか“ぬれおかき”、チーズケーキ頒布会12ヵ月、黒のタートルネックセーター
etc…。

ものは買っているが家の中はスッキリしてきた。いらないものを捨て、片付けはじめたからだ。この二年の間、私とHiroshiは家を片付けられなくなっていた。言葉を交さず、どちらも“うつ”のようであった。私はHPのことと夕食を作ること以外に何もせず、Hiroshiは庭と男手が必要な用事と重い物の買物以外は何もしなかった。荒みに荒んだ家の中を、もう昔のように彼と片付けることはできなくなった。居なくなってから家をきれいにするのは寂しいことだが、私はいつも居間で彼と一緒に居るのだ。

何でも買えよ。コートでもスーツでも好きなだけ買え」
重症の買物依存症であった彼の写真が私に語りかけている。私は答える。
なんにもいらない。なんにもいらないから帰ってきて

秋が深まり、木々が色づきはじめた。寂しい秋である。


2004年11月


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