短いコメントをする。私は黙って聞いている。女の食べていたのは
プリンを硬くしたようなもので、カスタードの味がした。それだけ
でも甘い上に、キャラメルソースまでかけるとは。私の方はとくに
珍しくもないレアチーズケーキで、さほど甘くなく酸味もある。こ
ちらでよかった。
 食後には、かならずコーヒーを飲む。夏でもホットで飲むのであ
る。牛乳を多めに入れ、カフェオレのようにして一日に五杯ほど飲
む。女は夏はアイスコーヒーを好んで飲む。ホットでもアイスでも
ミルクなしだが、恐しいほど砂糖を入れる。スプーンを山盛りにし、
それを三杯も入れるのだ。甘い物は好きだったが、甘い飲み物は昔
から苦手だ。いくらコーヒー好きでもそんなコーヒーは御免こうむ
りたい。それだけで御飯茶碗に二、三杯も飯を食ったことになりは
しまいかと案じてしまう。女は太り続け、服が入らなくなって困る
とこぼしていた。けれども甘い物や飲み物を辞めるつもりはまった
く無さそうだ。
 コーヒーを飲み終えると、女は流しでわずかばかりの汚れた食器
を洗っていた。帰る時刻が迫っていた。女が帰る頃になると、私は
寂しくなる。帰り支度を始めたら、後ろから抱きついて乳房を触り、
甘えてしまうことがある。
 女はその夜、用があって長居ができなかった。帰るまであと十五
分になった。それだけの時間では睦むこともできない。何ができる
かと考えたところ、名案が浮かんだ。隣りの部屋へ行き、押入れを
開けて花火の袋を出してきた。それは夏の盛りに女が買ってきたも
ので、タテ五十センチ、ヨコ四十センチほどもある大きな袋である。
「あっぱれ夏祭り」という派手な文字が、でかでかと書かれていた。
 五十を過ぎた私に、女はときどき子どもが喜ぶようなものを買っ
てくる。この花火のほか五月には紙でつくった鯉のぼりを持ってき
た。今年の誕生日には、仕切りのある皿にハンバーグだのエビフラ
イだの、タコウィンナーまであるお子様ランチをつくってきた。型
に入れて皿にあけたチキンライスには、私の名前が書かれた旗が立
てられていた。
 女が言うに、私が喜ぶからだという。たしかに子ども用に盛り付
けたカレーを初めて目の前に置かれたときは喜んだ。喜んだという
よりは驚いたのだ。飯の部分には、うずらの卵で目玉焼きをつくっ

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