て目にし、ハンバーグでつくった鼻、ウィンナーソーセージでつく
った口に、カレー( た)(てが)(み )見立ててライオンのように盛り付けてある
のには仰天した。あれ以来、子どもの様な食べ物や品物を与えると、
私が大喜びすると女は信じているようだった。
 この女に対してのみならず、人に何かを貰ったり、つくってもら
うと大げさに私は喜び、誉めるのだ。そのせいで要らない物をまた
貰ったり、さほど好きでもない食べものを何度も食うはめになるこ
とがよくあった。礼儀だと思ってそうしてきたが、それも考えもの
だ。それで近頃は何でもほどほどに喜ぶことにしている。
 私は甘えん坊なところがあり、長女である女は世話好きで、何く
れとなく世話を焼く。その焼き方に子ども扱いするというのがある。
その扱いに困惑することもあるが、大いに喜んで見せるので、女は
五、六才の男児にするように私を可愛がる癖がある。こちらもほど
ほどに喜ぶのがいいのかもしれない。
「花火をするぞ」と袋をバサリと女の前に置いた。
「するんですか」と女は少し驚いた顔をしたが、封を開けて花火を
取り出し始めた。どの種類も二本ずつ出している女の口元が、かす
かにほころぶ。ぜんたいこの女が笑うことは滅多になく、たいてい
無表情で機械的に受け答えをする。女の口から出るのは、「はい」
と「わかりました」がほとんどだった。ねんごろになり、好きだと
か惚れたと私が言っても聞こえぬ振りをしてみたり、表情ひとつ変
えることなく、「思い込んでおられるだけです」と言う。「お寂し
いから誰でもよくていらっしゃるんです」とも言った。この女は誰
にも愛されたことがないのだろう。愛され方を知らないのだ。それ
に何かが邪魔をして、出したくても女の可愛さが出せないでいるの
だろう。









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