いしぶみ


この石を届けてはもらえまいか
息災を知らせんがため
すべらかなる丸きこの石
届けてもらわばありがたし

      もみじ
春の桜 秋の紅葉は良かれども
日照りの夏はおてんと様もうらめしく
凍てつく冬は足指ちぎれんばかりなり

         わらじ
道は険しく草鞋すり切れ
笠うち破れ雨に濡れ
垢にまみれた躯むち打ち
巡礼の旅 わが志つらぬかん

    てのひら
目を閉じ両掌に包みこみ
安堵のこころに満たされよ
わが道のりに思いを馳せ
この石いだき眠るがよい

そこを急いでおられるお方
京へのぼる道すがら
和泉の国のおゆきという名の愛い女に
どうかいしぶみ このいしぶみ
届けてもらわばかたじけなし


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