受話器


「会いたい…」

あとは泣き声になった
ぼくは受話器を握りしめる

ケーブルだけでつながれたぼくと彼女を
真夜中の闇が包む

激しく泣く彼女の声に
すぐにでもそばに行きたくなる

この腕に抱きしめられなくて
ぼくは受話器を握りしめる


ひとしきり泣いたあと
子供のようにしゃくりあげた

沈黙のあと
彼女は静かに手淫をはじめた

吐息は喘ぎになり
よがり声となり歓びの声となり
小さく叫んで彼女は果てた

ぼくはただ
受話器を握りしめるだけ

会いたい 


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