君の残像


禁煙席
喫煙席
ドリンクバーのあたり
奥にある予約席
カウンターのあたり
厨房へ続く通路
レジスターのあたり

君は いない

この席に座ってぼくは
本を読むふりをして
ガラスに映る君を見ていた
注文の料理を運ぶ君
汚れた食器を下げる君
調味料を交換する君
閉店近くメニューを拭く君

君が見える
目を閉じて思い出す
白いブラウス 紺のスカート
レースのついた白いエプロン
せつない目をして立っている

君が聞こえる
耳を澄まして思い出す
はい ただいま参ります
生ビールでございます
ほうれんそうのソテーでございます

目を閉じれば君の残像
ここにも あちらにも
耳を澄ませば君の残響
ここから あちらから

君は いない

わかっているのに
わかっているはずなのに
待っても待っても探しても
君が もう
どこにも見えず聞こえないこと    


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