嬰児願望


あなたの中をのぞいたら
ぼくの眸にうつるものは何

遠いむかし
ぼくが生まれるずっとまえ
浮かんでいたおだやかな海


ぼくの固い舌さきが
ふれるものは何

やわらかな圧迫で
ぼくを包み込んでしまう
ここちよい閨


その舌のあじわいは何
幼いころ夕暮れに
山道でかじった木通

それとも
この世に生まれてすぐ
夢中でもとめた乳の味


夢想の果てに
あなたはぼくの母になり
ひらいたあなたの腿のあいだで
生まれたばかりのみどりごになる

※閨(ねや)……ねるへや、ねま
※木通(あけび)……アケビ科の蔓性低木、実は食用
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