女よ


あと十年もすれば
私の角膜は傷つきやぶれ
私の関節は壊れているかもしれない

おまえと出かけてビールを飲み
ほろ酔い気分で抱きしめ踊ることなどは
できなくなっているかもしれない


女よ
私が寝たきりになってしまったら
汚れた襁褓を替えてくれるか
赤子のように接してくれるか

毎朝うまいカフェオレを淹れ
好物のカステラを小さくちぎり
口のなかへ入れてくれるか


女よ
この指や身体がきかず愛せなくとも
もっと深く魂で愛されているのだと
五感で歓びを感じてくれるか

目を開けるのがつらい私に
本を読んで聞かせてくれるか
ほとばしり出る詩を書きとめてくれ


女よ
髪は薄く皺がふえてもかまわないか
足腰が衰えステッキをつくだろうが
しっかりと立ってみせるから

シャツにはきれいにアイロンをかけ
アスコットタイやネクタイで
粋に装わせ満足させてくれないか


女よ
生ある最後の一秒まで
私はおまえひとりのためにだけ
ダンディな洒落者でいたいのだ

※襁褓(むつき)……「おむつ」のこと


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