あとずさり


両掌をあわせ向かいあわせ
おのおの一歩 あとずさり
見つめあって あとずさり

腕をのばし 掌と掌をあわせ
なごりおしい温もり振りきり
さらに一歩 もう一歩

指さきはなれ てのひらはなれ
のばした腕が むなしいね
くうを泳いで かなしいね


君の言葉に毒されないところ
ぼくの甘えに惑わされないところ
そこまでたがいにあとずさり

君がぼくに思慕だけをよせ
ぼくが君に愛しさだけよせ
心でつながる最後の手だて


一歩うしろへ下がるたび
君との距離があいてゆく
この腕どこへやればいいんだ

君の「女」がぶつけられない地の涯てと
ぼくの「男」がぶつけられない空の果て
それらがふたりの目的地


見つめあって あとずさり
何もいわずに あとずさり
想いをこめて あとずさり

ふたりのゆくて霧につつまれ
うしろは断崖 もしくは絶壁
あるいは 神 それとも 仏
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