(はがね)


わたくしは鋼
灼かれ叩かれ堅く逞しく
おまえを支えてきた鉄骨

おまえが好む恋の世界を
風雨や雲や太陽から
守りつづけてきた鋼鉄


雨ざらしの歳月を経て
わたくしたちの棲む家は
かがやき失いみすぼらしく

おまえを支える鉄の柱は
錆びて赤茶け腐蝕している
いつ折れるともわからない

だからもう行け ここを去れ
わたくしの脚は土に埋もれ
動くことができないのだ


扉を閉めるそのまえに
いつものように微笑んでくれ
幸せだったと云ってくれ

骨が剥きだしの腕を伸ばそう
やわらかな頬にふれるため
万感こめて口づけるため

さあ 行け
ふり返らずに走り去れ
まもなく嵐になる雲だ


いかずち
雷よ わたくしを直撃せよ
雨よ打て 風よ吹け
思い出は雨水に浸出せず

熔解された愛は脈うち
この身たとえ朽ち果てるとも
わたくしは最期まで 鋼
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