夢想心中


我らは夜ごと刺し違えた

喉もと目がけて切っ先を突き立てた

血しぶき浴びては息たえた


陽が昇ると息ふきかえして甦り

日暮れに逢うは三途の川にかかる橋

闇にまぎれ愛欲にまみれて流された



このまま死んでしまいたい

達する女の口から洩れる言葉に

両の手に力こめては絞め殺し


女ばかりを死なせてなるものか

喉ぶえかき切り血に染まり

我らは夜な夜な心中をした


うつし世の恋 夢うつつ

うつし身の恋 夢がたり

明日のことは 夢あわせ



あだしが原を走り去り

魑魅魍魎を振りきって

夢まぼろしから抜け出たか


おのれ、何故もう口にせぬ

貴方とならば死んでもいいと

醒めたか冷めたか我いまだ橋の上

さめやらぬ恋 夢想心中



※うつし世……現世
※うつし身……生きて在ること
※夢がたり……夢に見たことを覚めてから物語ること。
また、夢のようなはかない話。夢物語
※夢あわせ……夢の吉凶の判断
※魑魅魍魎(ちみもうりょう)……種々の妖怪変化。さまざまのばけもの。

前の詩 次の詩

恋愛詩INDEX