桜の陥穽


立派な桜の木があるところ
其処らあたりは御用心
なぜならきっと落とし穴

古木であるとか名木だとか
そういう木こそ御用心
近づいたならば落とし穴

堕ちたあなたは真っ逆さま
地底めがけて暗闇の中
地軸を貫いたとて気づかれず

春になれば艶やかに
人を魅了し搦め捕る
命を呑み込み繚乱絢爛

その桜 男か女か両性具有か
その桜 御霊か魔性か
人か魔物か菩薩か鬼か

あなたの愛でるその桜
あなたを獲って喰う勢い
千年までも生きようと

あなたのこがれるその桜
其処から眺めているがよし
こぼれる花には手もふれず


※陥穽(かんせい)……おとしあな、人を陥れるはかりごと
※御霊(みたま)……神の霊。死者の霊の尊称


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