秋なんだ


朝日の射しこむガラス戸をあけると
きんもくせいの香りがした
きのうは気づかなかったのに

かすかな風にはこばれて
リビングルームに満ちあふれる
久しぶりに今日は青空
秋なんだ

きんもくせいの香りがすると
うれしいような かなしいような
なつかしいような気分になる

駅のホームや横断歩道で
いつも歩いている坂道で
突然の香りに虚をつかれ
とまどってしまうことがある
オレンジ色の小さく地味な花々に
なぜこんなに酔わされてしまうのか
  
わたしは ここです

あたりを見わたし探してみても
どこにいるのかわからない
どこから香るかわからない
やっと見つけると
一本の木が恥ずかしそうに立っていて
せつないほどに甘い香りを放っている

夜空にきらめく星のように
アスファルトや地面の上に
可憐な花をすべて散らしてしまうまで
やるせなくなるこの芳香につつまれて
ほんの短いあいだでも
心がキュッと痛くなる
思い出たちと遊ぼうか

秋 なんだ


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