沈 黙


あふれるほどの言葉は
ひしめきあっているけれど
栓をあける力がない
指さきが凍るように冷たくて
まるで感覚がないものだから


あふれるほどの言葉も
冷えきっているようだし
栓をあける気がしない
ほとばしり出たとしても
こわばる指は受けとめられない


あふれるほどの言葉には
てのひらに情熱と体温を
それらが指のすきまを埋め
こぼれ落ちてゆかぬよう
だから指にぬくもり戻るまで


あふれるほどの言葉にも
暖かなゆりかごで熟睡を
言葉が眠るそのあいだに
誰かをうるおす魔力がそだつ
だから熟成するまで今は沈黙


前の詩 次の詩

さみだれ詩集INDEX