大往生


梅雨も明けぬうち 
庭の木で鳴いたのはおまえか
皆がしりごみするなかで
勇敢にも先頭をきり
雄叫びをあげたのはおまえか

どれくらい生きたのか
愛するものとめぐりあえたか
つとめは無事に果たせたのか
この世に何も未練はないか
緑の芝生を褥にし
ここちよさそうに転がる蝉よ


生まれるとは
地から這い出してくることか
生まれ変わるとは
己の殻をやぶることか
生きざまとは
木に喰いつくことか
生きいそぐとは
せわしなく鳴きつづけることか

大往生とは
仲間の大合唱につつまれて
夏空あおぎ
嗤いながら逝くことか
輪廻を信じ
しずかに眠りにつくことか
みじかい命を燃えつくし

※褥(しとね)……布団、敷物のこと





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