白 魚


白魚のおどり食いというのがある

生きたままの数匹を

小鉢からつるりと呑み込むのだ


喉をとおり食道を過ぎ胃に達しても

泳いでいるのか 白魚よ

消化されかけた飲食物や

胃液の波に呑まれ揉まれて


澄んだ海で網にかかり

どういうわけか注ぎ込まれ

追い込まれたどろどろの海

蠕動運動につれ溶けていくのか

透きとおったからだのままで


生ある者は食わねばならぬにしても

生あるものを生きたまま喰らうことなど

いったい誰が許したというのだ


酔客よ 酔いがまわれば君が踊れ


愛でないか 喰らわずせめて愛でないか

二杯酢をかけられてなお美しい

その儚げな末期の姿を


人間のすることは傲慢だとまた思う



※蠕動運動(ぜんどううんどう)……筋肉の収縮波が徐々に移行する型の運動

※末期(まつご)……死にぎわ。臨終。


前の詩 次の詩

さみだれ詩集INDEX