右近庵猫事情 2006夏

猫がふえて困っている。
現在、家猫が3匹(ダッコ、じいじい、はるか)、外猫はふえもふえたり8匹になってしまった。

はじめはノラであったはるかちゃんのライバルとして現れたトラ子は、凶暴で引っ掻くため捕まえることができずに今に至る。避妊手術を施せないので何度も妊娠しては出産をくり返している。これまでも可愛い仔猫たちを連れて来たことが何度かあった。しかしそれらの仔猫たちは極端に臆病で、私の姿を見るや逃げてしまうのが常であった。したがって、仔猫たちがその後どうなったのか知る術がなかった。

昨夏、ほんの小さな猫であった小春と小トラを連れて庭に来た時、その可愛さに狂喜した。小トラはトラ吉の娘で、小春は病弱なクロの娘である。(クロは昨年9月に没)小トラは警戒心が強くてさわれず、小春は私に慣れて背中を撫でることが出来るようになった。この2匹はそれまでと違い、姿が見えなくはならず庭に居ついた。トラ子も私に心を開いたのであろうか。小春は父親に体質が似てか病弱なため、冬を越せるかと心配したが、病気をするも自力で快復した。その後2匹ともメスなので避妊手術を施した。

年が明けて今年の1月、またもや妊娠していたトラ子はパッタリと姿を現さなくなり、ひと月以上が過ぎた。その間も小春と小トラは時々はるかちゃんにイジめられながらも私を頼って2匹だけで庭に棲んでいた。もう仔猫ではなく中猫になっており、庭を拠点に近所を歩き回るようにもなった。あちこち探検するのも楽しいことであったのであろうか。トラ子は2月になってガリガリに痩せて現れた。冬場の子育ては、どうやらうまくいかなかったようである。その日から旺盛な食欲で、エサを求めてふたたび何度も右近庵に来るようになる。

トラ子のお腹はペタンとなったと思えばじきに膨らんで大きくなった。子育て失敗のあと、何度めの妊娠になるのだろうか、また膨らんでいた。そして今夏の7月、仔猫を4匹(!)連れて庭へやって来たのである。驚いたが可愛い。4匹全員が茶トラである。まぎれもなくトラ子の夫、トラ吉の子どもたちである。茶トラ夫婦の仔猫はすべて茶トラで、茶トラの合計は小トラを入れて6+1=7匹である。小春を入れて外猫(庭猫)は8匹になってしまったのだ。可愛いけど、あぁ、どうしよう、であった。

仔猫たちにも食べられそうな軟らかいエサを与えると群がって食べ、オトナたちが食べるドライフードにも興味を示し、ほどなく食べ始めた。かれらにすれば一粒が大きすぎるようで、肉たたきで小さく割ってから与えると、ずいぶん食べやすそうに見えた。しかしそれを毎回するのは大変なので、残った汁物や牛乳などを入れた容器にドライフードを浸し、冷蔵庫に入れておくと、ふやけて軟らかくなる。暑いことだし、ひんやりして軟らかいキャットフードは外猫たち全員がお気に召したようである。

4匹の仔猫の中で最も食欲旺盛なのがいる。他の仔猫たちが警戒して私に近づかないのに、オトナの猫たちに混じっては真似をしてニァオニァオとエサを要求する。この仔猫だけは首ねっこをつまみ上げ、抱っこをすることができる。今度こそこのコに小太郎と命名しようと思っている。(私は小トラをオスと思い、初めは小太郎と呼んでいたのだ)全員が茶トラだといっても、性格はもちろんのこと、毛の色や顔は皆ちがっている。小太郎はいちばん濃い色をしているので判りやすい。

庭へ出る2ヶ所の出口を“トラトラファミリー”に占領され、じいじいやはるかちゃんは、出入りがしにくくなった。子どもを擁したトラ子は俄然強く、家ネコに対する威嚇にも迫力があり、じいじいは脅えている。相性の悪いはるかちゃんは、子育て中のトラ子に仕方なく譲っているふうであった。4匹の仔猫たちは、よく遊び、よく食べ、よく母乳を飲んで、すくすくと成長した。2匹はオスのようで、未確認の2匹はメスのような顔をしている。したがって、また時期が来たら避妊手術に連れて行かないと、ふえてふえて困るだろう。トラ子も何とか捕まえて打ち留めにしなければ、両隣や近所に今以上の迷惑をかけてしまう。

ところが、このファミリーに異変が起きた。8月になってお盆が来る少し前のことであった。起きてガラス戸を開けると、外猫が1匹も居ないのだ。トラ子と4匹の仔猫たち、小トラ、小春。トラ吉は時折やって来るだけなので数に入れないとして、ファミリーの7匹が居ない。そう云えば、昨夜おそく、“グルルル”というトラ子の鳴き声がした。引越しを促す声だったのだ。夜になってトラ子や小春、小トラは現れ、いつものようにエサをねだったが、仔猫たちの姿が見えない。母親のトラ子は自分ばかり満腹になって、どこかへ消えて行った。

私は心配した。またトラ子は子捨てをしたのだろうか。小春や小トラをそうしたように、ふたたび産んだ子ども4匹を捨て、自分は生き延びて、子どもを産み続けるために、早くも仔猫を自立させようとする行動をとったのであろうか。折からの猛暑である。まだエサも探せないほど小さい仔猫が炎天下で路頭に迷い、弱っているのではないかと気が気でなく、落ち着かない数日を過した。3日ほどたった夜中、またトラ子の独特の声が聞こえたので、すぐに戸を開けると仔猫たちが居た。数日で痩せてしまい、皆たいそうお腹をすかしていた。

こんなことがその後もあり、移動の理由が何となく判った。月に二度ほど管理を任せている業者の人たちが庭に入るが、その前日に私が庭の道具などを片付ける。それでトラ子は縁の下で危険を感じ、あの恐しい芝刈機がうなる予兆と知り、子ども達全員を安全な場所に移すようであった。しかし悲しいことに、何度かの移動の後、仔猫が3匹になってしまったのだ。1匹だけとても臆病で弱々しいのが居たが、食も細く小さかった。そのコの姿が見えない。あーあ、どうしたのかなぁ……。

という訳で仔猫は3匹になってしまった。(可哀そうに)小太郎は相変らずよく食べ、いちばん体格が良い。あとの2匹はまだ私になつかないが、エサを喜んで食べる。小春と小トラは感心なことに、仔猫たちに先に譲り、食べるのを遠慮している。いいお姉ちゃん達である。トラ子に至っては、アジやハムを与えても、くわえて日陰に居る子ども達に運んでいる。お乳を与えているので栄養が必要だと思い、コッソリおいしいものを食べさせてやろうとしても、、自分で食べないことに徹底している。母親というのは、人も動物も(いや、最近は動物の方がずっと)自分を犠牲にしても子どものためを思うものなのだ。

このように、私は家猫3匹と外猫7匹の「11匹の猫」との共存である。(昔そんな名のミュージカルがあった)猛暑にバテ気味の長老ダッコは食が細り、めっきり痩せて小さくなった。しかし時おり、はるかちゃんやじいじいを威嚇しては家の中の威厳を保っている。18年を生きてきたダッコは健在、夏はもっぱらアウトドア派のはるかちゃんとじいじいは狩のシーズンで大忙し、ほとんど家に居ない日々である。去勢しているじいじいは、トラ吉によくやられている。トラ子とはるかちゃんは、出くわしたら激しい喧嘩になる。救出や仲裁に、たびたび飛び出さなければならない。

家猫も外猫もそれなりに手がかかるが、これらの猫たちが私をどんなに潤してくれているか計り知れない。だが、これ以上ふえないようにしなければなるまい。はてさて、どうしたものであろうか。



トラトラファミリーの仔猫たち 2006年7月撮影


2006年8月20日 

         
前の日常 次の日常

右近的 INDEXへ