返ってきたボール(その1)

戻らないボールを投げつづけることが虚しくなったと、私が起こした叛乱に対し、すぐに行動を起こしてくださった方がおられた。どうせ何も返ってこないと高を括っていたところ、素手で受け留めるには掌が痛いほどの球が返ってきたのだ。この場から改めて御礼を申し上げたい。

K・T様

私の投げた嘆きの弱々しいボールをしっかり受け止め、すぐに投げ返していただきありがとうございます。
2月11日のトークの内容に、衝撃を覚えられたとか。「しゃべらないよ」という私の言葉は、あなたお一人に向けられたように思われたとか。胸が苦しくなり、顔も赤くなり、穴を掘って隠れてしまいたいとさえ思われたとか。そこまであなたを狼狽させてしまい、申し訳ありませんでした。しかし、そんなに深く受け留めてくださった方もいないかと思われます。あなたはとてもいい方ですね。そのお気持ちはとても嬉しく思います。
 
一年ほど前から訪れてくださっているのですね。ありがとうございます。<ネット上の礼儀作法を知らない無礼者>など、めっそうもありません。ホームページとは、どなたでも、いつでもご自由に見ていただくために運営されているのです。気に入ったサイトにたびたび訪れるからと、挨拶をしなければならないというルールはありません。それは閲覧者の方々の自由意志だと思います。もちろん私も訪れる人すべてに返球を求めるわけではありません。ただ、私にはあまりにどなたもお言葉をくださらず、それが寂しく、悲しくもあり、虚しいと感じるまでになってしまったのです。少しくらいはメールがいただきたいのです。

<私のような者が、ホームページの製作者の方に、ご挨拶をするということは勇気がいることです>
私を含め、誰でもがホームページを趣味や愉しみとして運営しています。そのことで相手を自分より高い所に居る人だと思うことはどうでしょうか。私も好きで詩や文を書き、それを自身のホームーページで発表しているフツーの人間です。皆さんやあなたより高い所に自分が居るとは少しも思ってはおりません。<つたないメールを差し上げること><だいそれた行為>なのですか。<メールというのは高い高いハードル>なのですか。もう一度くり返します。私もあなたと同じフツーの人間なのですよ。どうぞご安心くださいね。(笑)

<必死になってあなたにボールを投げ返そうとしています>
と言ってくださってありがとう。私はそれを待ち望んでいたのです。<共感したら即メール、感激したら即メール、飲み過ぎないでねと即メール、お身体大丈夫ですかと即メールとは中々できないものです>というのはその通りでしょう。そんなことは決して望んではおりません。くり返しになりますが、私には、あまりどなたからもお声が届かず、見ている方々の存在すらもまったく見えず、いったい誰に向かって言葉を出しているのかと虚しくなってしまったのでした。

<『透けてゆく人』拝読させていただきました。品川図書館で借りました。絶対に私が一番だと思って予約したのですが、私は二番目でした。>
ありがとうございます。この部分を読み、私はこの度の叛乱を起こした甲斐があったと思いました。このメールをくださらなければ、検索で私の本があることを知った品川図書館で、どんな方が借りてくださるのか、また、一番だと思っていた予約が二番であったと、あなたがたいそう口惜しがっておられることも私には伝わらないことでした。<書店で買わなくて申し訳ございません>は一向に構いません。私は売れることより、どんな手段であっても、多くの人びとに読まれ、末永く読みつがれることを最も望んでいますよ。
 
夕餉の話をしましょうか。そうですね。あなたの言うとおり、私は料理をするのがマメな人間ですから献立ては毎日ほぼ完璧でしょう。魚や野菜を昔から好み、身体にいいものばかりが好物です。アジ、サバ、イワシが大好きですし、切り干し大根やひじきの煮物や納豆は、冷蔵庫にないことがありません。お忙しいあまり、コーンフレークに納豆や豆腐というあなたを、バランスのとれた私のふだんの食事にお招きしたいくらいです。

<今はじめて、あなたから受け取ったボールを返します。必死になってあなたにボールを投げ返そうとしています>
ありがとうK・Tさん。たしかに私はあなたからの剛速球を受け止めました。あなたのボールは強すぎて掌が少しばかり痛いです。でもこれは、嬉しい痛さです。いい球を投げてくれたよなという喜びの痛みです。

<えいやぁ! と送信ボタンを押すことにします。私にとっては冷や汗ものです>
ありがとうK・Tさん。お顔や姿はわかりませんが、私の頭の中で、あなたという人のイメージが湧き、ひとつの人型となって納められました。以後、私がパソコンから呼びかけ、話しかけるとき、あなたは数少ないイメージできるおひとりになりました。あなたのメールに私は救われました。熱い思いをすぐに届けてくださって、ありがとう。また頑張ろうという気持ちが湧きました。それではまた。

                 水無月右近

  (メールの文からの引用はK・Tさんに了解を頂いています。)

2006年3月12日 

         
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